令和3年度空気調和・衛生工学会大会(福島)

技術展示会

東京大学大学院工学系研究科建築学専攻 赤司研究室

赤司研究室では、脱炭素と快適な暮らしが両立する社会の実現を目標として日々研究・教育活動を行っています。建築・地域のエネルギーシステムを対象とした省エネ・脱炭素化に資する高効率な運用や再生可能エネルギー活用、健康・快適な熱・空気環境の形成、社会動態やステークホルダーの意思決定に基づく施策効果の定量化などについて、ビックデータや情報技術を活用した研究開発を行っています。主なテーマは以下の4種類に分けられ、各々が興味のあるテーマに取り組んでいます。
(1) スマートなエネルギーマネジメント (2) 人中心の新しい室内環境と行動変容 (3) 再生可能エネルギー活用と需給連携 (4) 省エネ・脱炭素施策や非エネルギー便益の定量化

Smart HVAC system with detailed system simulation

詳細システムシミュレーションを独自開発しながら、時々刻々と得られるセンシングデータを活用した、従来にない空調システムの高効率な設計・運用の実現を目的に研究しています。既存の主なプログラムは年間のエネルギー消費量の算出を目的として構築されており、実際の制御の反映に課題があります。そこで当研究室では、物理モデル・制御モデル・自動制御ロジックを機器仕様書や制御仕様書に基づき可能な限り忠実に再現した、建物と空調の統合的シミュレーションを独自に構築しています。これにより、変風量・変流量制御やデマンドレスポンスといった制御の挙動を詳細に再現し、その省エネルギー性や温熱快適性を定量的に評価しています。

Operation optimization of building energy system based on deep learning and reinforcement learning

ビルのエネルギーシステムの運用を最適化するために、本研究では、シミュレーション環境、予測モデル、最適化アルゴリズムの3つのサブモデルを導入し、シミュレーションを行う。まず、正確な予測モデルを構築し、将来の屋外の天候と建物のエネルギー消費量を予測する。この予測結果に基づき、最適化モデルでは、システム全体で強化学習(RL)またはモデル予測制御(MPC)を適用する。予測と最適化モデルには最先端の人工知能アルゴリズムが使われるため、これらのアルゴリズムをいかに効率的に使い、建物のエネルギーシステム分野の既存の知識やソフトウェアと有機的に統合するかが、この研究の焦点である。

Analysis and Energy Saving Control in District Heating and Cooling System

地域冷暖房システムの省エネを目的として、需要家と熱供給事業者の連携(需給連携)による効率的なシステム運用が期待されています。現状、需要家におけるデータの入手や活用が困難であり、需給連携に関する十分な検討はなされていません。そこで本研究では、実運用されている地域冷暖房システムの需要家からデータを入手し、需要家における現状の運用を分析しました。特に需要家オフィス代表階のエアハンドリングユニット(AHU)の冷温水の往還温度差や制御弁の開度に関して年間を通して分析しました。また、需要家内部のAHU弁における圧力損失を小さくする制御をシミュレーションし、二次側ポンプの省エネポテンシャルを示しました。
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Policy studies for decarbonization of office buildings

温室効果ガスの削減は日本でも近年その重要性が増している。2020年には2050年までに脱炭素社会を実現することが首相表明され、翌年には2030年までに2013年度比で46%減とすることが政府から発表された。しかし、業務用建築物においてはZEBを実現するための技術的な研究が多くなされている一方で、大きく普及していない側面があり近年でもエネルギー消費は漸減傾向に留まっている。そこで本研究は、オフィスビルを対象に脱炭素の実現に向けた施策をバックキャスティングにより設定し、施策を打ち出す時期や組合せをシミュレーションにより分析・整理することで、脱炭素への道筋を明らかにすることを目的としている。
室内の空気環境には時間的・空間的なムラが生じる。また、快適と感じる空気環境には個人差がある。これらを適切に組み合わせ、行動変容を起こすことは、満足度の高い空調の実現に繋がると考えられる。本研究室では、①情報提供により、省エネに関する個人の行動に変化が起きること、②温熱環境の快適範囲には個人差があり、これを用いた座席配置決定により熱的満足度が向上することを検討してきた。現在は昨今感染症流行下で重要となっている換気に着目し、換気対策が在室者周辺の空気質に及ぼす影響と分布活用の効果を検討している。

Non-Energy Benefit in Building Commissioning

建築物のコミッショニング(Cx)は、発注者の要求性能を明確にし、その性能を実現するための有効なプロセスである。Cxは、大きな省エネルギーポテンシャルと様々なNEB(Non-energy benefit)を持つとされているが、国内では、初期コストや工期などの課題により、ビジネスベースでの普及に至っていない。Cxにより生じるNEBは定量化が難しく、このことがCxの過小評価の一因となっている。本研究では、Cxを導入した熱源・空調設備改修プロジェクトを取り上げ、ヒアリング調査を通じてCxのNEBを整理・定量化することで、Cxの本来の価値を考察する。さらに、日本の建設プロセスにおけるCxの特徴を整理する。

お問合せ情報

研究室名 東京大学大学院工学系研究科建築学専攻 赤司研究室
URL https://www.akashilab.com/
E-mail 教授 赤司泰義 akashi@arch1.t.u-tokyo.ac.jp
助教 宮田翔平 miyata@arch1.t.u-tokyo.ac.jp
住所 〒113-8656
東京都文京区本郷7-3-1 工学部1号館107

公益社団法人 空気調和・衛生工学会