2024年9月2日
 公益社団法人 空気調和・衛生工学会
会長 秋元 孝之 
 「カーボンニュートラル社会をリードするNet Zero の追求 ―空気調和・衛生工学分野の5つの提言―」を公表
 
 2050 年のカーボンニュートラル(以下、CN)社会実現に向け、日本政府は2030 年までに2013 年比で46%の温室効果ガス削減を目指し、さらに50%削減に向けて挑戦の継続を表明している。目標の達成には、民生部門における建築・都市の徹底した省エネルギー化・脱炭素化の推進が鍵となっている。空気調和・衛生工学会では、2012年3月に「21世紀ビジョン」、2017年12月に「21世紀ビジョン・プラス」を発表し、3つの提言と学会の役割を示してきた。特に提言2 の「ZEBの普及と超低炭素社会への圧倒的寄与」は空気調和・衛生工学分野として社会に大きく貢献できることであり、国の施策に採用されたZEBの定義および未評価技術の評価手法構築など、継続的に活動を実行してきた。しかし、その後の「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(建築物省エネ法)」の強化を始めとした社会情勢の急激な変化や技術開発の進展を鑑みて、空気調和・衛生工学分野としてのCN社会の実現に向けたさらなる貢献が求められている。
 
 これから目指すべきは、本会の先導してきたZEBをさらに進展させたホールライフカーボンの正味ゼロ、“Net Zero”である。そのためには運用時のエネルギー削減だけでなく、建設時、解体時、そしてサプライチェーンを含めた温室効果ガスの抑制が求められる。気候変動が進行する中、世界ではエネルギーの安定供給への影響が懸念される紛争が絶えず、エネルギーセキュリティーの面でも省エネルギーの推進が重要である。感染症によるパンデミックや、頻発する激甚災害に対するレジリエンスの観点から、建築設備における備えを充実することも求められている。さらには、SDGsの達成、超高齢化などの社会的課題、建設分野の人手不足に対応するための施工合理化や働き方改革と多岐に渡った課題が山積しており、これらの対策を同時並行で進めていく必要がある。

本会では、2022年4月に「カーボンニュートラル社会実現に向けての学会方針検討委員会」が創設された。委員会は、17 名の学識経験者および設計業、総合建設業、設備工事業、エネルギー供給事業の実務家により構成されている。この度、その成果をまとめて、CN 化とその後の社会に向けて5つの提言を行い、空気調和・衛生工学分野として取り組むべき課題と方向性を示した。

 
  「カーボンニュートラル社会をリードするNet Zero の追求 ―空気調和・衛生工学分野の5つの提言―」 要約版(PDF)