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2.微分方程式の例 現象が何らかの微分を含む関数で表される例は多い。こ こでは、そのような例を二つ示す。 2.1 換気される居室の濃度の時間変化 室内における汚染質の収支に着目し、室内の総汚染質量 の増減を、発生量、換気量などから予測する数学式を導 く。図-3に示す換気される室内を考える。 室内での汚染物質の出入りは、微小時間冲[s]の間を考 える。この微小時間冲の間に室内の空間平均汚染物質濃 度は、汚染の発生と室内外の流出入により微小量、僂ave 増加する。これを式で書き下せば以下のようになる。
ここで、排気口濃度Coutに対する空間平均汚染質濃度 Caveの比E を定数と仮定し(図-3参照)、式(9)を整理す ると、独立変数tとtの従属変数であるCaveの関係式が導 かれる。
一般にCave、t以外は定数とされるが、実務の問題では Qやqがtの従属変数であることは多い。式(10)で冲が ゼロに近づく極限を考えると、式(10)はいわゆるCaveに関 する1階の微分方程式となる。
式(11)で、外部からの流入Cinや内部での発生qがない 場合、すなわち左辺第3項が無視できるとCaveの時間変化 は、次式となる。
式(12)は、右辺が負でありCaveの時間減衰を表すが、減 衰速度(時間こう配)が、Cave自身に比例することを示して いる。工学では、時間や距離などの独立変数に対する従属 変数のこう配が、式(12)のように従属変数自身に比例する 負の値となる現象がよくみられる。室内における残響の時 間減衰や、媒質中の光などの距離減衰などは式(12)にみら れる関係式で記述される。その意味で式(12)の解は、これ らの現象と共通する形式を持つ。 式(11)は、定常状態では時間微分項がゼロとなり、Cave は次式で表せられる。
また式(13)は、E の定義から Caveは次式で表せられる。
物体を貫流する熱流とその温度分布を考える。一般に、 物体内の熱伝導は、熱流が温度こう配に比例するフーリエ の法則が成立する。
ただし、ここでは三次元の熱伝導を考え、テンソル表記 を用いる。 xi方向の熱流hi [W/m2] 熱伝導率 [W/(m・K)] 温度T [K] xi方向の温度こう配∂T/∂xi [K/m] ここでは添え字iは、位置座標の方向を表す。i=1.2.3 また.テンソル表記の例にならい、本節では添え 字に関し Einsteinの総和規則を適用し、同一項に 同じ添え字が二つ現れる際には、その総和を取るも のとする。 熱流などの輸送量が温度などのポテンシャル量のこう配 に比例する現象は、工学の問題でよくみられる。こう配に 輸送量が比例することをこう配輸送という。こう配のない 均一の状態では、輸送はゼロとなる。ここで、∂T/∂xi は、温度Tに関するxiの偏微分を表す。温度Tは位置座 標を示す独立変数xi:i=1、2、3および時間を示す独立変 数tの関数であるが、偏微分では、着目する独立変数以外 の独立変数は、関数のなかで定数として微分する。 式(15)は、Tのほか、3方向の熱流hiを含む。式(15)中 の右辺の一記号は、温度こう配の方向と熱流の方向が逆で あり、温度こう配が負の方向に正の熱流が生じることを示 す。 熱伝導率kが位置座標xiに関し変化せず、定数と見な されるとき、比熱pCp[W・s/m3]を導入し、微小立方体の 熱量保存則を立てることにより、式(15)の熱流に関する フーリエ則から次式の熱伝導方程式が得られる。
式(16)は、微小区間δxiにおいてxi+δxiから流出する 熱流とxiで流入する熱流の差が、その地点の熱量の増分 (温度の増分に比熱を乗じたもの)になることを示す偏微分 方程式となっている。式(16)は、テンソル表記によりEin steinの総和規則を適用した表記となっている。最右辺の 項を通常の表記で書き下せは次式となる。
式(16)は、熱伝導が生じている物体のすべての点、すべ ての時間で成立する関係式である。この式と物体の境界面 における温度もしくは熱流の境界条件、さらに境界面も含 めた物体内の初期の温度分布(熱流分布)が与えられれば、 この物体内の温度分布、熱流分布に関する全情報(完全な 情報)が与えられたことを意味する。1.4で述べたよう に、初期条件、境界条件を頼りに偏微分方程式で与えられ る温度の時間および空間こう配の情報を用いて、物体内部 の温度分布をその時間経過を含めてデコードすることがで きる。偏微分方程式および初期、境界条件のセットから物 体内部の温度分布の時間経過を含めた全情報をデコードす ることを、微分方程式の解を求めると称している。 |
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