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 1.3 要素とシステム
 システムは、環境のなかにあって環境条件が整っている ことを前提に、入力もしくは外乱を得てその状態量を変え 出力を出し、外部に働きかけをするものである。入力には 意図せざる入力というニュアンスにより、外乱と称される 入力もある。また、システムの出力はシステムの応答と称 されることもある。一つのシステムの出力は、別のシステ ムの入力にもなり得る。一つのシステムが複数のシステム の入力になることもあるであろう。これら個々のシステム が組み合わさって、大きなシステムを形成することもあ る。この場合、大きなシステムの要素となる部品のシステ ムをシステムの"要素"と称する。自然界や人が実現した機 能のなかで生じる多くの事象は、このような部品のシステ ムの組合せで説明されることも多い。空気調和・衛生工学 や建築環境工学で扱う多くの事象も、この要素の複合した システムで記述され得る。
 図-3に示すような多層壁面を貫流する熱流を例にし て、システムと要素を考えてみる。通常、高温部と低温部 を断熱する壁は、熱伝導率の異なる幾つかの層から成り 立っている。断熱壁全体を一つのシステムとしてみると、 各々の層は要素になる。各々の層で、熱流に関するフーリ エの法則が成立している。



 熱流に関するフーリエの法則は、断熱層内各点における 熱流が各点における温度こう配に比例して生じることを示 している。式(1)中の右辺の−記号は、温度こう配の方向 と熱流の方向が逆であり、温度こう配が負の方向に正の熱 流が生じることを示している。
 熱伝導率kが位置座標xに関し、定数とみなされると きは比熱pCp[Ws/m3]を導入し、式(1)の熱流に関する フーリエ則から熱伝導式(2)が得られる。



 式(2)は、微小区間δxにおいてx+δxから流出する熱 流とxで流入する熱流の差がその地点の熱量増分(温度増 分に比熱を乗じたもの)になることを示している。
 この層Tの要素と層Uの要素が結合してできる熱伝導シ ステムの模式図を図-4に示す。図-4(a)は、境界条件とし て温度を入力し、境界面の熱流は境界面での制約条件によ り定まるものとした要素、二つが結合してできるシステム を表し、図-4(b)は、境界条件として熱流を入力し、境界 面の温度は境界面の制約条件により定まるものとした要 素、二つが結合してできるシステムを表す。
 図-4(a)で、層Tは、境界面温度T0(t)、T1(t)を入力と し、境界面熱流q0(t)、q1(t)を含む内部の熱流分布q(x, t)、および内部の温度分布T(x,t)を出力する要素システ ムを形成している。層Uは同じく、境界面温度 T1(t)、T2 (t)を入力とし、境界面熱流q1(t)、q2(t)を含む内部の熱流 分布q(x,t)、および内部の温度分布T(x,t)を出力する要 素システムを形成している。層Tと層Uのそれぞれの要素 システムは、層Tと層Uの境界面(中継点)の温度T1(t)を 共有して、境界面温度T0(t)、T2(t)を入力とし、層Tと 層Uの境界面の温度T1(t)を含む内部の温度分布 T(x, t)、境界面熱流q0(t)、q1(t)、q2(t)を含む内部の熱流分布 q(x,t)を出力とする全体システムを形成している。要素の 結合にあたって、層Tと層Uに挟まれた境界面温度T1 (t)、熱流q1(t)のは、それぞれの要素システム層1と層Uで 同じ値をとるという条件を課されている。図-4(b)のシス テムでは、システムへの入力が境界面温度から境界面熱流 に変わっているが、出力が内部の熱流および温度であるこ とに変わりはない。図-4(a)、(b)は、入力がそれぞれ温 度もしくは熱流のみの要素システムの結合を示したが、一 方が温度入力、一方が熱流入力の要素システムが結合し、 入力の一方が熱流で他方が温度を入力とする全体システム も存在する。結合面(中継点)での温度および熱流は、両要 素で同じ値をとるという条件を課されることは無論同じで ある。



 式(3)、(4)は、定常状態での熱流が温度差に比例する ことを示しているが、比熱(熱容量)に関する項は現れてい ない。定常状態の温度伝導では、比熱の効果すなわち壁内 の蓄熱の効果は現れない。壁内の熱容量の効果が陽に現れ るのは、非定常熱伝導の場合である。式(3)、(4)は、境 界面での温度 T1、T0および T2、T1を与えると要素シス テムの内部の温度分布(定常状態では直線分布)および熱流 (定常状態では一定値)が与えられることを示している。
 この層Tと層Uの中継点を通過する熱流q1は、層Tと 層Uで等しく、中継点での温度T1も層Tと層Uで等しい ので、



 ただし式(8)は、式(6)、(7)から T1を消去して求め ている。
 式(9)は、層Tと層Uの合成されたシステムにおいて境 界面での温度T2、T0により境界面での熱流q0、q2が合成 された熱抵抗(x1+x2)/kゐにより与えられることを示してい る。ただし、合成された熱抵抗(x1+x2)/kは、式(8)、 (9)の比較より式(10)で与えられている。また、内部の温 度分布(定常状態では直線分布)および熱流(定常状態では 一定値)は、それぞれ要素システムにおける熱流に関する 式(3)、(4)で与えられている。合成されたシステムは、 合成されたシステムの境界条件を入力として、合成された システム全体における内部の温度分布および熱流分布を出 力するシステムを形成している。
 上述の例は、二つのみの要素から成り立つ単純なシステ ムであり、その解析も定常を仮定した極めて単純なもので あった。しかし、要素システムの構造と入力条件が明らか になっていれば、その要素システムを結合した合成システ ムの構造も同様に明らかであり、合成システムにおける適 切な入力条件を与えれば、対応する出力や内部の状態量が 得られる。合成システムにおける要素システムの結合は、 中継点での変数の値が結合する要素間で共通するという極 めてあたりまえで単純な原理に基づいて行われる。

 1.4 キルヒホッフの法則
 システムの状態を表す変数のうち、上述の熱流に相当す る輸送される量を流通量、温度に相当するものを位差量と いうことがある。
 図-3に示した複層壁の伝熱システムでの要素の結合 は、結合(中継)点で二つの要素のみが関係していた。しか し、一般には電気回路や流体が流れる管路網のように一つ の中継点には、三つ、四つと三つ以上の要素が結合する場 合がある。三つ以上の要素が結合する場合、流通量に関し ては、中継点で各要素の値が単純に共有されるわけではな い。流通量には、値のほかに方向があり、要素からの流出 と流入がある。前述の例では、層Tと層Uの中継点での熱 流q1に関し、層Tに関しては流出を層Uに関しては流入 を仮定していた。中継点がこのほかの要素とも結合し三 つ以上になっていると各要素から中継点に流出、流入する 流通量は単純に等しくはならない。
 流通量は、一般にその保存別により要素と要素をつなぐ 中継点で生成や消滅が生じることがなければ、中継点に流 入する量の合計と中継点から流出する量の合計は常に等し くなる。図‐3の例では、層Tからの中継点に流入する熱 流と層Uへ流出する熱流が一致するものとした。これをキ ルヒホッフの第一法則という。位差量は、中継点につなが るすべての要素に関して同じ値を取る。図-3の例では、 層Tと層Uの中継点での温度は層Tと層Uで同じ値をと る。中継点で結ばれた要素を経て、次の中継点に到達する たびに各要素の位差量は単純に加算される。中継点で結ば れた要素のつながりが閉じた回路を形成する場合、回路に 沿って1周する位差量の総和はゼロとなる。これは、キル ヒホッフの第二法則という。構造物の力による変位、振動 を扱う場合などでは、力のつり合い条件がキルヒホッフの 第一法則に相当し、変異の連続条件がキルヒホッフの第二 法則に相当する。
 キルヒホッフの法則は、ポテンシャル差(位差量)で要素 内の流通量が定まる、電気回路、伝熱回路、管路を流れる 液体や気体の輸送量解析の基礎となる。電気回路は、抵抗 やコンデンサ、コイルなどの要素に関して、その空間的広 がりを考慮する必要はあまりない。一般に、抵抗やコンデ ンサなどの内部におけるポテンシャル(電圧)分布や電流分 布に興味はなく、これらの要素が結合された回路内の電圧 や電流の変化に興味がある。これら要素を導線で結んだシ ステムは、要素の1点に状態量を集約できる集中系のシス テムとなる。熱伝導は、特に非定常熱伝導では材料内で温 度分布、熱流分布が生じ、同一の材料内である熱伝導要素 のなかでも位置の違いによる分布が生じ、非定常熱伝導で はこの効果も興味の的となる。熱伝導のように、要素が空 間的広がりを持っていることを無視し得ないシステムは、 分布系のシステムとなる。しかし、熱伝導のような分布系 のシステムも状態量を要素の1点に集中させた集中系のシ ステムとして考察することが可能である。熱伝導や管路網 を流れる流体解析で、電気回路内の電流と電圧の解析のよ うに要素の効果を1点に集約し、集中系に置き換えられて 解析されることも多い。
 1.5 ブラックボックス
 複雑なシステムで、個々の要素の特性とその結合の状態 がわからないものでも、入力に対する出力を実測してその 特性を明らかにすれば、そのシステムを実用に供すること ができる場合がある。あるシステムに関し、その内部構造 に触れず、入力を出力に変換する特性のみに注目してみる ことを、特定の入力、出力特性を待ったブラックボックス としてみなすという。抽象化されたブラックボックスを要 素とするさらに人きなシステムの特性を論議することが、 工学ではよく行われる。


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