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施設管理の動向 ―コミッショニングから設備改修へ (6)ESCO事業による設備改修 前川哲也 日本ファシリティ・ソリューション 正会員 |
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キーワード:ESCO(Energy Service Company)、コミッショニング(Commissioning)、設備改修(Renewal of Building Service Systems)、性能保証(Performance Contracting)、施設管理(Facility Management)
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はじめに ESCO(Energy Service Company:エネルギー サービ ス会社)という単語が徐々にではあるが、その認知度を上 げている。そのナショナルセンターとでもいうべき"ESCO 推進協議会(会長:茅 陽一東京大学名誉教授)"は1999年 10月に、15社の参加により設立されたが、2年後の2002 年1月には会員企業84社と、短期間に5倍以上になっ た。そのすべてがESCO事業を直接手がけているわけで はないが、ESCO事業は少なくとも関連業界のなかでは、 多くの注目を集めている"新しいビジネス"である。 今回の講座で、コミッショニングとの関係でESCOが 取り挙げられるのは、ESCOのビジネスモデルのなかに、 コミッショニングが内蔵されており、しかもそれが金銭の やりとりを伴うからであろう。すなわち、ESCO事業者 は、それが主な事業領域とする省エネルギーリニューアル 市場において、 1)工事竣工後の性能を保証すること 2)性能が保証水準に満たなかった場合には不足分を補 てんすること がそのビジネスモデルのなかにビルトインされていること から、コミッショニングの真の担い手であるということも できる。しかも、ESCO契約は一般に10年程度以上と長 く、ESCOのコミッショニングは"コンティニュアス コ こッンョニング"でもある。これらの言葉は、それぞれの 社会的情勢のなかで登場したものであろうが、同じ時期に 脚光を浴びることとなったことに因縁めいたものを感じる のは筆者だけではあるまい。 また、我が国の省エネルギーを推進する立場からみれ ば、当事者ではなく外部の専門家が省エネルギーのネタを 探し回り、その売上と利益の拡大のためにできるだけ多く の省エネルギーメニューを取り入れようと工夫し、その結 果についても長期間関心を持ち続けるという、ESCOにビ ルトインされた仕組みは従来になかったものであり、COP 7の合意により本格的な地球環境問題への対策が求められ ていくなかで、ESCOは頼りになるビジネスモデルであ る。 1.ESCOとは(その歴史) 1980年代の米国では、電力会社に対する各州の公益事 業委員会の指導で、いわゆる省エネルギー活動が義務づけ られていることが多く、例えば、省エネルギー型冷蔵庫の 購入者に電力会社が奨励金(リベート)を支払ったり、住宅 の断熱改修工事に補助金を電力会社が支給したような例 は、日本でも知られている。米国は自由経済の国というイ メージがあるが、電力供給事業のような公益事業について は、もともと電力会社の数も多く(全米で3,160社、DOE/ EIA調査1999年現在)、各自治体の公益事業委員会が強 力な権限を当時は有していたのである。電力会社のなかに は、この業務を社外に委託して実施する会社も多く、その ために子会社をつくったり、あるいは既存の民間会社を活 用してこの実務に対応していた。これらの会社群がESCO の前身であったといわれている。 1990年代は、米国の電力会社にとって"大変な時代"で あった。規制緩和の象徴として、多くの電力会社が市場競 争に放り込まれた。ここで"多くの"と記したのは、"すべ て"ではなかったからで、例えば電力危機で有名になった カリフォルニア州でも、その主要都市の一つであるロサン ゼルス市では規制緩和を一切せず、市の水道電力局が独占 的に電力供給を担っていたことから、カリフォルニア州の 電力危機と無緑だったことはあまり知られていない。 本題に戻そう。市場競争はまず価格競争から始まり、次 第にサービス競争に進化していく。価格競争のために、コ ストダウンを迫られた電力会社は、不要不急の?事業の中 止に追い込まれ、そのなかには上記の"省エネルギー活動" も含まれていた。規制緩和を推進していた公益事業委員会 も、従来のように電力会社に対して省エネルギー活動を強 制することはできず、結果として多くの活動が廃止されて いった。これにより、電力会社からの省エネルギー活動を 受託することで成り立っていた会社は、別の収入源を確保 することを迫られた。さらに、電力会社のなかでこのよう な業務を発注していた部門も、同様にスリム化の対象とさ れ、発注者だった部門までもが外部化されたこともあっ た。競争下の電力会社は、価格競争に耐えうるコスト水準 を実現するために、最小限の機能だけを内部に置き、付加 的な機能については外部化し、必要に応じて調達する方式 を採用したのである。 自立を迫られた"省エネルギー活動受託会社"は、省エネ ルギー技術を電力会社に提供するのではなく、エネルギー のユーザーに販売することを考えた。電力会社の付加価値 サービスとして提供されていた技術を、エンドユーザーに 対して直接販売するようになっていったのである。電力会 社からではなく、エンドユーザーから仕事を受注する、そ の厳しさのなかで次章に示すESCOのスキームができ上 がっていったことは想像に難くない。 このような会社を支援したのは公的部門であった。1992 年国家エネルギー政策法は、すべての連邦政府機関に対し て、投資回収年数が10年以下となる省エネルギー対策を 実施するように義務づけた。そして、1994年にはクリン トン大統領の行政命令(12920号)として、連邦政府機関は ESCOスキームなど(公益事業者のエネルギー効率化プロ グラム、ESCO契約、エネルギー削減保証契約)を積極的 に採用するように指示が出されている。これらの政策の効 果として、特に"MUSH"*と呼ばれる分野が、ESCO事業 者に大きな市場を提供したといわれている。 日本にESCO事業の概念が紹介されたのは、1996年ご ろであった。当時の通商産業省資源エネルギー庁省エネル ギー対策室の委員会として、"ESCO検討委員会"が設置さ れた。筆者も東京電力を代表して参加したが、省エネル ギー効果を源資に設備投資を回収することをビジネスとし て成立させることは容易ではなく、一方で、当時散見され た違法悪質な"節電業者"を国が認知する事態は避けたいと いう認識であった。この委員会は、1996年12月に報告書 を取りまとめたが、主な結論として下記の事項が記載され ていた。 1) 米国におけるESCO市場はすでに500億円で、そ の原動力はエネルギー市場の規制緩和と公的建物への 積極的導入 2) 日本におけるESCO.市場の潜在的市場規模は2010 年断面で約2000億円 3) 日本においてもESCO事業普及に必要な施策を講 じるべき この報告書を受けて(財)省エネルギーセンターに "ESCO事業導人研究会"が設置されたのが1997年4月の ことである。この研究会は、会費無料だったこともある が、208社が参加し、関連する業界各社の関心の高さを示 していた。また、これとほぼ何時期の1997年5月には 日本で最初のESCO事業会社である"(株)ファーストエス コ"が日本総合研究所を中心として設立された。この会社 が、上記の研究会に参画することにより、日本における ESCO事業に関する動きは一つの流れに統合されることと なった。この動きはその後、1998年の"ESCO事業実証委 員会"を経て、1999年10月の"ESCO推進協議会"の設立 にいたり、冒頭に述べたように、会員数15社でスタート したこの協議会は、現在84社にまで急成長している。 * MUSHとは、Military(軍の施設)、Municipality(自治体 施設)、University(大学)、 School(学校)、Hospital(病院) を指す。 |
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