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3.業務用ビルのエネルギー管理

3.1 ビルにおけるエネルギー管理の実情
 図‐4は、(財)省エネルギーセンターが昨年度に第二種 エネルギー管理指定工場を対象に行ったアンケート調査の 結果の一部で、原単位管理の実施状況を木したものであ る。 生産エ場においては、80%が実施しているのに対し て、ビルにおいては最高でも60%であり、学校・病院・ 官公庁にいたっては30%前後であり、 エネルギー管理意 識の低さを如実に表している。

3.2 ビルにおけるエネルギー管理のあり方
 以上のような実情においてはいうまでもな組織、体制 の確立が大前提である。エネルギー管理に対して、経営者 が問題意識を持つことが最も重要であり、まず目標を設定 し、全員が推進意識を共有するとともに.努力の結果がわ かって達成感が得られるような組織・体制の構築が不可欠 である。
 次に、エネルギーの使用合理化を図るための改善すべき 箇所を見いだすには、現状を把握することが不可欠なこと は自明であるにもかかわらず、ほとんどのビルが現状を把 握していないのが実情である。 かなりしっかりしたエネル ギー管理を行っているビルでも、原単位管理がなされてい ないケースも少なくない。
 ビルにおけるエネルギー管理は、その概要を表した図-5 に示すように、まず組織・体制を整備し、エネルギーの消 費状況と建物、設備の特性を把握すること力前i提になる。 改善ターゲットに対して省エネルギー計画を作成(Plan)、 実施して(Do)その効果を検証(Check)、そしてその結果 を踏まえて、さらなる対策を講じる(Action)。さらに、同 じ手法を定期的に繰り返して省エネルギー管理の精度を上 げていくことが必要である。すなわち、PDCA(Plan Do Check Action)のサイクルを実行するわけである。

3.3 原単位管理
 自分のビルのエネルギー消費量が、同じ用途のビルの平 均と比べて多いか少ないかを知るための最も簡単な方法 は、1年間に消費した電力・ガス・油などの全エネルギー を一次換算した値をビルの延べ床面積で割ったエネルギー 消費原単位による方法が用いられる。また、この指標はエ ネルギー消費量の増減を知るために、最も有効なツールで あり、省エネルギー対策の効果の検証に大きく役立つこと はいうまでもない。
 参考として、平成9〜12年の4年間に(財)省エネルギー センターで診断実施した種々の用途のビルに対するエネル ギー消費原単位を示したものを図-6に示す。
 しかしながら、ビルにおけるエネルギー消費量は気候条 件だけでなく、営業時間、利用者数、空室率など種々の影 響ファクタにより大きく左右される。一方、改正省エネル ギー法による判断基準の努力部分として、年平均1%の原 単位低減が求められているため、単に延べ床面積によるの ではなく、前記の影響ファクタをうまく組み合わせて、省 エネルギー対策の効果が原単位の低減として現れるようそ れぞれのビルの特性に合わせた計算方法を工夫することが 必要になる。

3.4 エネルギーの消費先比率の把握
 図‐7は、(財)省エネルギーセンターで4年間に診断実 施した事務所ビルにおけるエネルギーの消費先別比率の平 均を示したものである。熱源・熱搬送の空調が40%、照 明コンセントが36%で合わせて80%近くを占めており、 事務所ビルの省エネルギーを図る場合、まず空調と照明コ ンセントをターゲットとするのが効果的なことがわかる。
 このように、エネルギーの消費先別比率を把握すること が、エネルギー使用にかかわる改善点の発掘に大きく役立 つことになる。
 しかしながら、ほとんどのビルでは計測器が設備されて いないため、使用先別比率の推測には専門的なノウハウが 必要になるので、定期的に専門家によるエネルギー診断を 受けることが望ましい。

3.5 機器・設備のエネルギー効率の把握
 機器・設備の効率は当然、経年により劣化するが、これ を把握しているビルはほんのわずかしかないのが現状であ る。効率を把握することによって、運転方法の良否、性能 維持のための予防保全を評価し、改善点の発掘につながる だけでなく、最新機器へのリプレース時期の的確な判断も 容易になる。

3.6 自動制御のチューニング
 省エネルギー制御を含めて、自動制御が高度化するにつ れて、そのシステムがブラックボックス化し、運転管理者 の意のままに調整することが難しく、省エネルギー的に正 しい動作をしているかの判断すら困難になってきている。
 このような環境の下で、自動制御のチューニングを進め ることは極めて難しいといえるが、それによる効果の大き いことも事実である。某設計事務所が竣工後にビルの運転 管理者と一緒にチューニングを進めた結果、3年後にはエ ネルギー消費量が竣工年度に比べて15%も低減すること に成功した例もある。
 例えば、年間を通じて空調機やファンコイルユニットに 冷水と温水を供給する四管システムは、ホテル・病院など でよく採用されているが、自動制御のデフォルト設定に任 せていると負荷側に必要がない場合でも夏期に温水、冬期 に冷水を消費しているケースが少なからず見受けられる。 また、冷凍機の冷水出口温度は高く設定するほうが運転効 率がよくなることは当然であるが、ほとんどの場合、運転 時間の大部分を占める部分負荷のときでも、ピーク時と同 じ値に設定されている。
 それぞれのビルの特性に合わせたチューニングが、省エ ネルギーに大きく貢献することになる。
 3.2で述べたビルのエネルギー特性の把握(省エネル ギー診断)が不可欠であるゆえんである。同時に、中央管 制装置においては、エネルギー管理上必要にして十分な データが採集できることがいかに重要かがわかる。

4.ビルにおける管理標準の作成と活用

 2.で述べた省エネルギー法の履行義務は、従来、生産工 場においては違和感なく受け入れられていたが、ビルにお いては判断基準、管理標準など聞き慣れない用語に大部分 の設備管理者が戸惑っていることは前述した。そのため、 おおかたの場合、省エネルギー法の趣旨をそしやゃく(咀嚼) することができず、判断基準に沿った管理標準を設定し て、エネルギー管理を進めることができないでいる。
 本章では、生産工場向けに制定された省エネルギー法の 趣旨をピルに適用するための解釈とビル向け管理標準の考 え方について述べる。

4.1 管理標準に求められる条件
 管理標準の目的は、作成するこではなくそれを有効に活 用して省エネルギーを推進することにあるのはいうまでも ない。そのために、管理標準の作成に際しては、最低限以 下の5項目が満たされていなければならない。
 1)
日常の管理に使いやすいこと:いかに立派な標準で あっても、使用されなければないに等しい。実施でき る範囲の標準であることが第一条件である。
 2)
具体的管理数値が表現されていること:管理にあ たって、数値が明確に示されていなければ具体的な管 理目標が定まるはずがなく、具体的管理数値は不可欠 である。
 3)
計測点を明確に示していること:管理すべき数値を 採取するポイントが確定されていることが2)ととも に最低条件であることはいうまでもない。
 4)
管理と使用量の因果関係がわかること:省エネル ギーを目的に、エネルギーを管理した結果の検証が あって初めてその効果を評価でき、不十分な場合の再 対策も可能になる。一つの方法として、最も明快な指 標である原単位が挙げられる。効果の評価をわかりや すく示すために、管理対象部分のエネルギー消費量を 経時的なトレンドで表現するなど、具体的な管理指標 を表現することが必要になる。
 5)
体制、組織とそれぞれの役割の明記:3.2で述べた 最も重要な管理体制について、管理標準に明記してお くことも忘れてはならない。

4.2 工場における判断基準7項目のビルへの適用
 表-2に示した工場における判断基準7項月は、エネル ギー管理において配慮すべき事項としては必要十分な項目 といえる。しかしながら.7項目の判断基準はエネルギー の状態変化に基づいて、それぞれの使用合理化に対する指 針が示されているのに対し、ビルにおいては設備項目ごと に管理項目を整理するのが一般的である.したがって、管 理標準の作成においても、設備項目に基づいて表現したほ うがなじみやすいと思われる。表-3に、ビルにおける設 備項目と工場における判断基準7項目の関係をマトリクス にて示す。

4.3 管理対象項目
 第二種エネルギー管理指定工場の指定を受けたビルであ れば、必ず中央監視装置が設備され、そこからは膨大な管 理データが吐出される。しかしながら、データ量が多すぎ るために、かえってその使い方がわからず、大部分の場合 せっかくのデータが死蔵されているのが現状である。それ どころか、膨大なデータのなかにエネルギー管理に必要な データがないケースも珍しくはない。従来、中央監視装置 の役割は、設備保全と室内環境維持のみに偏っており、エ ネルギー管理の機能は組み込まれていなかったといっても 過言ではない。
 第ニ種エネルギー管理指定工場の指定を受けて、初めて エネルギー管理の手法を導入しなければならなくなった。 そのため.最初から多くを期待することは無理であり、ま ずそれを実行することが肝要である。
 管理項目もすべての設備を網羅するよりは、消費比率の 大きな設備、消費量の低減が人きく期待できる部分から整 備していくべきことは、3.4で述べたとおりである。

4.4 管理標準に記載すべき事項
 管理標準には、様式が定められているわけではなく、そ れぞれのビル、事業所に合った使いやすいフォーマットと 内容で作成するべきことはいうまでもないが、最低限盛り 込まなければならない事項について述べる。
 (1)管理標準の目的、位置づけ
 管理標準が何のためにあるのか、その目的、思想につい て明記する。また、組織のトップの名において、定めるこ とも不可欠である。
 (2)トップによる省エネルギー目標
 省エネルギー推進にとって、最も大事なことは経営トッ プが推進意識を持つことである。
 年度あるいは期ごとに経営トップが省エネルギーの目標 を数値で示し、それに向かって具体策を策定、全員で推進 することの義務づけを記述する。
 (3)推進体制
 経営トップが自らを頂点とする管理組織を構築し、同時 に各職場代表からなる委員会を組織し、小集団活動による 意見・アイディアを吸い上げるとともに、グループ間での 競争意識を醸成する。
 すなわち、トップダウンとボトムアップによって図-5 に示すPDCAサイクルを組織全体で推進することで、大 きな成果が期待できるわけであり、明記は不可欠である。
 (4)原単位管理
 3.3で述べたように、エネルギー管理の原点である。同 種の施設平均との比較に加え、年度ごとに増減のトレンド を記録することによって、問題点の発掘、省エネルギー推 進活動の検証に対する有力ツールとなる。


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