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4.消火設備の歩み

 消火設備は、現在の主なカテゴリーでは大きく分けて、 水系とガス系の2系統に分けることができ、さらに、薬剤 の形状からスプリンクラ設備、泡消火設備、ガス系消火設 備、粉末消火設備、ウォータミスト、ほかに分けられる。 これらの発達を極簡単にまとめた2),3)

4.1 水系消火設備の歩み

 防火用水・バケツの類は、ここでは消火設備から外させ ていただき、現代的な消火設備までスキップさせていただ くこととして、消火用のスブリンクラは17世紀には存在 していたようである。消火用のスブリンクラのアイディア は、庭先の散水に使っていた散水器にヒントを得たと聞い ている。イギリスでの出来事である。
 17世紀後半には、自動消火装置の特許が出されていた。 しかし、いわゆる消火用のスブリンクラとして受け入れら れるようになったのは、19世紀も終盤のころ米国のF.グ リネルがスプリンクラヘッドのところに熱がかかったとき に容易に水を放出するような構造を考えてからのことで あった。
 1920年代以降、特にスプリンクラによる消火の期待が 高まり、デフレクタに多くの改良がなされ、噴霧型(スプ レー湖)の開発は、1953年、FM(米国ファクトリーミュ チュアル社)で開発された。米国シカゴのUL(アンダーラ イターズラボラトリー)には、これまでに開発された多種 多様のスプIJンクラヘッドが所狭しと陳列ケースに収めら れている。
 一方、日本では、1888年ごろイギリスより、紡績機械 とともに輸入されたのが始まりであり、紡績工場に設置さ れた。1960年代に消防法で規定され、ビルへの設置が義 務づけられて一般に普及した。

4.2 泡消火設備の歩み

 泡消火設備は、1877年イギリスで化学泡が考案された ことから始まる。その後、ロシアでナフサタンクの火災に りする消火設備への応用として実用化が試みられ、泡の安 左剤が改良され、2液混合型の泡発生装置が出現した。反 応によって発生した二酸化炭素が気泡剤であった。化学泡 は、低温時に発泡性が低下することから、固結防止や溶解 件の向上が図られた。H本では、1920年代前半に化学泡 凧定泡消火設備が導人された4)
 その後、1930年代後半に、ドイツで加水分解したタン パク質水溶液と第1鉄水溶液を混合させると同時に、空気 を吸引させて発泡させる2液型泡消火装置が開発され、さ らに、安定剤を加えた1液型の泡消火剤が開発された。
 タンパク泡消火薬剤の出現により、化学泡消火薬剤は普 及が遅れた。液体危険物火災に対しては、タンパク泡のほ うが有効であったからである。
 機械泡消火薬剤は、アンモニウム石けん液にほう砂や硫 女を溶かして二酸化炭素や窒素ガスを加圧して送り込み、 発泡させる"1液型のもの"は20世紀に入ってすぐにドイ ツで考案された。1927年には、ドイツで開発された"泡消 火薬剤をポンプで送り、発泡器のところで空気を吸引して 発泡させるタイプ"の装置が開発されて、これが現在の機 械池発生装置の原形といわれている。その後、サポニン水 溶液に空父や他の気体を送り込んで発泡させる方式のもの も開発されて、さらに、高発泡性の消火薬剤の開発へとつ ながっていった。
 一方、合成界面活性泡は1930年代から40年代にかけて 発達し、アルキルスルホン酸塩、アルキルアルコール硫酸 塩などを起泡剤としてサポニン、アルブミン、にかわなど を安定剤に用いて、石油類火災に有効な泡消火剤が開発さ れた。
 しかし、タンパク泡に比べると、石油系火災に対して性 能がやや落ちることからあまり重要視されなかったが、 1955年以降、イギリス、米国での相次ぐ高発泡消火剤の 技術が実用化されて、普及するようになった。これらは、 固体可燃物火災、石油類火災、液化ガス火災への応用が可 能になり、目的に応じて、低・中・高発泡消火泡薬剤が開 発されるようになった。
 水成膜泡は、ジェット燃料などの油火災の際に、放出さ れた泡消火剤が液体可燃物の表面に水溶液の界面活性剤の 膜を形成して可燃物のガス化を遅らせ、再着火を遅らせる ことによって、消火に導く効果を発揮するものである。こ れには、フッ素系界面活性剤が有効である。1964年ごろ 米国で開発され、日本での国産は1974年である。現在で は、寒冷地以外の地域における駐車場用泡消火設備として 多く採用されている。
 このほか、水浴性液体用泡消火薬剤もあり、液体可燃物 火災に有効なものも多々ある。

4.3 ガス系消火剤の歩み

 炭酸ガス(二酸化炭素)消火剤は、20世紀始めには出現 しており、米国のNFPA(NationaI Fire Protection Assocjation)ですでに1929年に規格になっている。日本 では、船舶に義務づけられたのが1933年で、軍艦や発電 機、変電設備などに応用された。当初は、"炭酸ガスは単 独では有毒ではない"といわれていたが、誰もがその無毒 性を疑わなかったわけではなかった。ただ、ニ酸化炭素の 消火効果の有効性が高く評価されて、毒性評価が十分では なかったために、何件かの死傷事故を経験するまで危険性 が叫ばれなかった。
 ちなみに、1999年度に米国環境保護局で世界の事故調 査した報告書によると事故総件数61件中18件が日本で、 死者・負傷者数はそれぞれ、119人、152人で、そのうち、 日本はそれぞれ、20人、40人に上っている5)
 ハロンガスは1960年代に米国で開発され、1970年に規 格化された。究極の消火設備としてもてはやされ、急激に 世界各地を駆け巡ったが、1974年にフロンによるオゾン 層破壊、人体への悪影響が指摘され、1987年にはハロン もオゾン層破壊物質に指定されて、1994年には特定ハロ ンの生産が全廃になった。現在も消火装置にハロンが使え ないわけではないが、リサイクルハロンの使用は"エセン シャルユース"としてハロンに代え難い使用不可欠の防御 部分には許可される。
 ハロンに代わる代替ハロンの研究が急激に盛んになり、 ハロンに近い化合物でありながら、毒性・オゾン破壊係 数・温暖化係数などがそれほど大きくないハロカーボン系 の消火剤や、アルゴン、窒素を主体とした、窒息系ガスが 台頭し その混合割合で消火の特徴を表している消火剤が 出現した。ウォータミストもガス系消火設備として、仲間 入りしている。
 ウォータミストは当初、スプリンクラの延長で評価され ていたが、その微粒子が熱を受けて瞬間的に水蒸気という 不活性ガスになり、ガス系消火剤の特徴を有していること から、ガス系消火設備の仲間として評価されるようにも なった。米国NFPA(米国防火協会)では、1996年に ウォータミストの規格を制定したが、その後の急速な技術 開発で、2000年度版の改訂で考え方が大きく変わった6)
 日本では現在、ウォータミストに関する規格はまだでき ていないが、日本消防検定協会、危険物保安技術協会で評 価を受け、また、各自治体の消防局の許可が得られれば設 置可能である。法定の消火設備が義務づけられていない工 場などでは、許可を得ずに任意設置が可能である。評定第 1号機の設置は2000年10月である。

4.4 粉末消火設備の歩み

 粉末消火薬剤は1951年ごろ、米国より日本に技術導入 されて以来のことであるから、歴史的にはまだ新しい。炭 酸水素ナトリウムを徴粉化したものに、金属石けんを滑剤 として混ぜたものである。当初は、油火災(B火災)、電気 火災(C火災)に効果が高く評価された。
 1964年に炭酸水素カリウムを主剤とした粉末消火剤の 開発、1965年にリン酸ニ水素アンモニウムが開発される と木材、他にも消火能力があり、A、B、Cいずれの火災 にも適用可能な薬剤が開発された。
 粉末消火剤は、その消火時の反応機構からガス系消火剤 に含まれるが、ハロンが使用制限されているなかで、現在 使われている粉末消火薬剤は、オゾン層破壊には今のとこ ろ関係ないものとされているため、その潜在効力に期待し て"ファインパウダテクノロジ"として見政二されつつある。 ファインパウダの消火性能の潜在能力は、ハロンよりも人 であるとさえいわれており、可燃性液体が噴出する"スプ レー火災"の消火には威力がある。

おわりに

 消火に際しては、消火薬剤の有効性が火事の特徴によっ て異なるので、建物の特徴、可燃物の特徴を理解したうえ で有効な消火設備の選択と設置、消火の戦術が求められ、 さらに、復旧時の労力や地球環境の保全をも考慮に入れ て、温暖化や動植物・人体への悪影響を極力小さくした消 火薬剤が求められる。これからの火災は、単に"消せばよ い"ではなくて、いかに少ない消火剤で消火し、消火後の 復旧に対して早く、かつ、安全な消火法であるか、問われ る"適材適所の消火法"が要求される。
 環境問題に真剣に取り組むようになったのは、ほんの 10年程度前のことで、それまでにも環境問題は起こって いても、医療関係のように人体に直接被害にあったもの以 外は、ほとんど無視されていた。消火設備にあっても、へ 後は環境問題を考慮に入れない消火設備は、早晩、世の中 から葬られることになるであろう。

参考文献
1) 消防用設備等関係法令通達編、(財)日本消防女令センター(2000-5)
2) 高橋 太ほか:消火システム専門委員会報外書、消火システムの現状と研究動向(2000-12)、日本火災学会、学術委員会
3) 鶴田 俊:火災 249号、50-6(2000-12)
4) 沖山博通:泡消火剤の歴史、検定協会だより(1996)、184号、185号、187号、188号、189号
5) Carbon Dioxide as a Fire Suppressant、Examining the Risks:EPA レポート、430-R-00-002(2000-2)
6) NFPA 750:Standard for the lnstallation of Water Mist Fire Protection Systems、2000 edition
(2001/3/21 原稿受理)

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