学会誌・論文集 トップへ

1/5
インバータと高調波(6)
高調波障害の事例と対策(その2)


竹谷是幸 中立電機(株)
key

キーワード: 高調波(Harmonics),コンデンサ(Capacitor),アクティブフィル夕(Active Filter)

1.負荷からの高調波電流による電源電圧のひずみとガイドラインの精神

 これまで、高調波電流の発生源となる種々の負荷設備と高調波電流の発生の仕方について 述べてきた。図-1に示すように、配電網には高調波電流の発生源(定電流電源)となる 多くの負荷が接続され、負荷から配電網へ向かって高調波電流を流し込んでいる。 読者は、これまで電流は電源から負荷へ向かって流れるものと常に考えてきたと思うが、 高調波問題を考える場合には、高調波電流が負荷から電源へ向かって流れると考える 発想の転換が必要である。

これらの高調波電流は、集積されて電源へ向かって流れ、 送配電線インピーダンスで高調波電圧降下を発生する。 したがって、需要家接続点の電圧は、正弦基本波の電圧からこの高調波電圧降下を 差し引いたひずんだ波形の電圧、すなわち高調波を含んだ電圧となるのである。 なお、この高調波電圧降下は、多数の需要家の負荷から流出する高調波電流の 集積によるものであるので、一部の負荷を追加接続あるいは切り離しを 行ってもほとんど不変である。したがって、配電網の高調波電圧ひずみは 定電圧ひずみとして取り扱うと、高調波問題が考えやすくなる。
 高調波問題を検討する場合、配電網には基本波電圧に加えて高調波定電圧源が存在し、 一方負荷側には多数の高調波定電流源が存在すると考えると、一見複雑な高調波現象についても 明解な理解が得られることが多い。
 さて、配電網に存在する高調波電圧は、これに接続される負荷に対して さまざまな障害を及ぼす。すなわち、変圧器、電動機、コンデンサ、リアクトルなどの 電力機器の過熱、寿命低下、焼損や開閉器、制御器、計測器の誤動作などである 〔本講座第5回"高調波障害の事例とその対策(その1)"、空気調和・衛生工学、 75‐4(平13‐4)、参照〕。
 このような高調波問題を解決するために、通商産業省(現経済産業省)資源エネルギー庁 公益事業部は平成6年9月"高圧または特別高圧で受電する需要家の高調波抑制対策ガイドライン"を 発布した。
 このガイドラインは、電力利用基盤強化懇談会において、系統の総合電圧ひずみ率と 高調波障害発生の関係を考慮して提言された"高調波環境月標しベル"(6.6kV配電系統で5%、 特別高圧系統で3%)を維持するよう、高調波の発生者である需要家が高調波電流の流出を 抑制するための対策を行う際の技術要件を定めたもので、需要家から系統に流出する 高調波電流の許容される上限値は、高調波の次数ごとに表-1(ガイドラインの表1)に 示す需要家の契約電力1kWあたりの高調波流出電流の上限値に当該需要家の 契約電力(kWを単位とする)を乗じた値としている。

 電気協同研究、第46巻、第2号"電力系統における高調波とその対策"では、 系統電圧ひずみ率の抑制目標値は表-2のとおりとし、表中の総合電圧ひずみ率の 抑制目標値を環境目標レベルそのものとし、次数別展開は高調波電流の失態を考慮するとしている。 なお、第三次調波については、諸外的の例ならびに実態を考慮し参考値として定めている。

 表-1の契約電力は、"電力会社との需給契約上の契約電力"とは異なり、 例えば実量制契約電力の場合には"設備契約電力"を用いる。
 表-1(ガイドライン表1)は、力率1として計算した基本波電流に対する百分率で表現すると、 表-3のようになる。

 このように、6.6kV受電と特別高圧受電の場合の2種類に分かれ、特別的高圧受電ではすべての 電圧階級で同じ値である。また、次数ごとの上限値は第5調波を基準として第7調波は5/7、 第11調波は5/11のように、5/nを乗じた値である。もし、このガイドラインに決められた 手法によって計算した結果(計算手法については後述する)、需要家からの高調波放出電流が 上記の上限値を超える場合には、高調波流出電流を上記の上限値以下となるよう 必要な抑制対策を講じなければならない。
 ここで注意しなければならないのは、このガイドラインの高調波流出電流の上限値は、 あくまで計算によるものであって、測定によるものではないということである。 
 例えば、需要家と配電網の接続点で高調波流出電流を測定した場合、 測定結果は需要家からの流出高調波電流と配電網に存在する高調波電圧により、 需要家構内へ流入する高調波電流のベクトル和になるが、ガイドラインでは需要家からの 流出電流のみを問題にしている。

このページの先頭に戻る