学会誌・論文集 トップへ

1/3
インバータと高調波(5)
高調波障害の事例と対策(その1)


竹谷是幸 中立電機(株)
key

キーワード: 高調波(Harmonics)、インバータ(lnverter)、強電電子機器(Power E1ectronics Device)、力率改善用コンデンサ(Condenser for Reactive Power Compensation)

はじめに

 これまで述べてきたように、電気エネルギーの利用、特に半導体応用機器の使用に伴う 高調波電流の発生は避けられない状況にある。このまま放置した場合には、その利用の増加により、 系統における高調波電流の総量も増加し、電圧ひずみは拡大し、ひいては電力利用環境の悪化を招くことになろう。 図‐1は、進相コンデンサ設備の障害を発生した高圧需要家設備の受電電圧と高調波電圧の実測例を示している。 我が国の将来に向けて、より強固な電力基盤を確立するためには、先見的な高調波対策を 早急にうち立てていかなければならない。

 高調波による障害としては、進相コンデンサや直列リアクトルのうなり、加熱または焼損、変圧器の異常音、 過電流遮断器の不要動作、三相4線式配線の中性線の過電流、OA機器類の電源波形異常によるトラブル、 などの事例が報告されている(図-2)。



1.保護継電器の誤動作

 継電器類には、従来誘導円盤形や電磁形のもの、いわゆるメカ形が主に使用されてきたが、 これらの周波数特性は、基本波に対する感度が最もよく、高調波に対しては鈍感なものであった。
 一方、半導体を用いた静止形継電器は耐振動特性および耐久性のよいこと、 CT(変流器)およびPT(計測用変圧器)の負担が小さくて済むことなどから、使用が増加している。 ところが、静止形はメカ形と比較して原理的に高調波による影響を受けやすいため、 メカ形では問題とならなかった波形で誤動作する場合がある。保護継電器の型式別による ひずみ波の影響を表-1に示している。



2.配線用遮断器の誤動作

 配線用遮断器は、動作原理によって熱動・電磁式、完全電磁式、電子式の3種類に分類できるが、 高調波の影響は表-2に示すように差がある。高調波を含む電路への配線遮断器の適用については、 これを収納する盤内の温度補のみでなく、電流波形ひずみによる特性変化と温度上昇を考慮して、 定格電流を負荷電流に対して表-3のように余裕を持たせる必要があり、また電線サイズについても 併せて検討しておく必要がある。



3.漏電遮断器の誤動作

 漏電遮断器は、人命を守る機器として位置づけられているので、高調波によって感度電流が 増加するようなことがあってはならない。高調波による影響は、次のように動作原理によって異なる。

3.1 周波数特性

 電磁式および電子式の周波数特性を図-3に示している。 図によれば、電子式の場合は第5調波(250 Hz)の場合に感度電流が急激に増大する様子がわかる。 要するに、危険側に誤動作する可能性がある。



3.2 電子式の高調波特性

 波高値検出方式と平均値検出方式の高調波特性を図-4に示す。 波高値検出方式は、波形が凹形の場合(例えば、第3調波位相が0°の場合)に感度電流が増加し、 平均値検出方式では、波形が凸形の場合(例えば、第3調波位相が180°の場合)感度電流が増加する。



3.3 電磁式の高調波特性

 電磁式の場合は、高調波の影響を受けにくく感度電流の変化は少ない。

このページの先頭に戻る