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(1) 低N0x燃焼技術

燃焼法の改善による低N0x化技術についてやや詳しく述べる。

a 低N0xバーナ
バーナを改良して、NOxの排出が抑えられるような形にするいわゆる低NOxバーナは、バーナを交換するだけで、炉の改善を要しない点で極めて経済的な方法である。低NOxバーナの原理は、主にバーナ構造を変えることによって、火炎中に局所的な還元領域を形成することによって、NO生成を抑制する方法と、広い放射面を持つ薄い火炎をつくることによって、火炎から壁への放射伝熱を促進させ、結果として火炎温度を低下させてNOxの生成抑制を図る方法の2種類がある。前者の原理に基づいた方法として、自己再循環バーナと濃淡燃焼バーナ、一方、後者の原理に基づいた方法としては急速混合型バーナがある。
1)
自己再循環バーナ:このバーナは、石油化学プラントの加熱炉用に開発されたもので、バーナの概略を図‐2に示す。このバーナでは、周囲空気の火炎への同伴を抑制するために、火炎の基部を円筒壁で囲う構造になっている。したがって、空気の同伴が抑えられる結果、火炎基部が燃料過剰状態での燃焼となり、Thermal NOおよびFuel NOの生成が抑制される。空気不足燃焼の結果生じるC0、H2、HCなどの未燃分は、図‐2の円筒周辺から配給される燃焼用空気によって再燃焼する。このバーナを用いることによるNO低減率は30〜40%である。

2)
濃淡燃焼バーナ:このバーナは、Thermal NOおよびFuel NOの双方に有効であり、ガス燃料や液体燃料だけではなく、石炭燃焼にも有効である。図‐3に、予混合火炎の空気比を変化させたときのThermal NOとFuel NO生成濃度の定性的傾向を示す。化学量論比近くでThermal NOの排出がピークとなる。したがって、空気比が化学量論比がどちらにはずれても、NOの排出濃度は低下する。濃淡燃焼の実際は、複数バーナのうち、半数を空気比1.0以下で運転し、他の半数を空気比1.0以上で運転する方法である。このタイプのバーナとして、M重工のPMバーナがある。このバーナのシステムでは、中心部のバーナは、空気比0.8で運転され、周辺部のバーナは空気比1.2で運転される。NOの低減率は30〜40%である。

3)
急速混合型バーナ:急速混合型バーナは、燃料と空気とを急速に混合させることによって薄い平板火炎を形成し、炉壁への放射伝熱を促進することにより、Thermal NOを低減化する方式である。したがって、このバーナは水冷型のボイラに有効である。本バーナの特徴は、Thermal NOの低減だけではなく、COとすすの生成も抑制し、燃焼効率を改善できる点である。液体燃料燃焼の場合の急速混合型バーナの例を図‐4に示す。液体燃料燃焼の場合、燃料は半径方向に微粒化され、空気と急速に混合して、従来型バーナに比べて表面積の大きな薄い平面火炎を形成する。この型のバーナは、N分をほとんど含まないガス燃料あるいは液体燃料の燃焼に用いられる。このバーナでのNO低減率は20〜40%である。



b 排ガス再循環法
排ガス再循環法は、炉出ロから排ガスをリサイクルされ冷却した後、入口の燃焼用空気に混合させて、火炎温度を低下させることにより、Thermal NOを低減化する方法である。この方法は、Thermal NOを低減化する方法としては極めて有効であるが、以下のような問題点を有する。
1) 温度の影響の少ないFuel NOの抑制に有効ではない。
2) 火炎が不安定になる。
3) 低N0xバーナに比べて、改造コストが高くなる。 したがって、この方法は、排ガス量が105m3/h以上の大きなスケールの燃焼炉のみに適用可能であり、小・中規模の燃焼炉には相対的にコストがかかるため、適合しない。

c エマルジョン燃焼法
エマルジョン燃料とは、少量のエマルジョン添加剤を与えて、オイル中に水を分散させた燃料である。エマルジョンは、オイル中に水滴が存在するw/o型と水中にオイルが存在するo/w型がある。従来は、その低粘度性とハンドリングの容易さから、w/o型エマルジョンが用いられてきた。エマルジョン燃料が高温場で微粒化したとき、オイル中の水は瞬時に蒸発して二次微粒化を引き起こすため、これが高速で高効率の燃焼につながる。燃焼熱は、部分的に水の蒸発によって失われるので、火炎温度は低下し、Thermal NOの生成も抑制される。エマルジョン燃焼では、前述したように、高効率の燃焼が実現できるので、空気比を、COやすすの生成を伴わずに1.0付近まで近づけることができる。したがって、高効率燃焼を維持しながら、Fuel NOの生成も抑制できる。また、この方法は、N分を含む液体燃料を用いる燃焼装置に適用することも可能である。
この方法の問題点は、水の蒸発に伴う、エネルギー効率の低下であるが、これは、前述した燃焼効率の上昇と空気比の低減化によってほぼ補うことができる。本方法の特徴は、炉を改善する必要がない点、およびすすの抑制にも有効な点であり、小型スケールのポイラの低NOx化に適している。なお、エマルジョン燃焼法によるNO低減率は30〜40% である。なお、エマルジョン化のためのコストは、燃料コストの約5%である。次に、Zeldovich NOおよびFuel NOの双方に有効で、いまだ改善の余地の残されているニ段燃焼法および燃料二段燃焼法についてやや詳しく述べる。

d ニ段燃焼法
ニ段燃焼の原理は、一段めでは空気流量を絞って燃料過剰燃焼を行わせ、二段めでは燃焼用空気を新たに吹き込んで燃料希薄燃焼を行わせる方式である(図‐5)。このような燃焼を行わせると、温度分布がフラットになり、ピーク温度が低く抑えられるために、Thermal NOの生成が抑制される。さらに、一段めの燃料過剰燃焼条件下でFuel NOが大部分N2に転換するため、Fuel NOも抑制される。ニ段燃焼においては、ニ段めの空気吹込み位置が最も重要な因子の一つである。NOx最終レベルに及ぼすニ段め吹込み位置の影響を調べると、吹込み位置が下流に移動するに従って、最終的なN0xのレベルは急激に低下していることがわかる(図−6)。この場合には、空気吹込み位置をバーナロから1 200 mm以上下流に設置する必要のあることが示唆される。なお、石炭燃焼に関しても、同様な結果が得られている。さらに、ニ段燃焼によるN0xの低減に関しては、最適な一段めの空気比が存在する。例えば、都市ガスニ段燃焼では、一段め空気比0.8が低N0x化のための最適条件であることが実験的に示されている。これは、一段めで発生するNOとNH3、HCNなどの中間生成物1がほぼ当量生成するような空気比条件下では、
NO+I→N2
I:NHx, HCNなどの中間生成物
の反応が生じて、NOおよびニ段めでNOに変換する可能性があるIがともに消滅して無害なN2に変化するためであると考えられている。二段燃焼法は、ガスや重油だきボイラやガラス溶融炉のような高温炉にも広く用いられている。また、石炭燃焼ボイラや小型の石炭燃焼炉にも用いられている。ニ段燃焼法の欠点は・火炎温度が低下するため熱効率が低下する点であったが、これは排ガスのエンタルピーを用いて燃焼用空気を予熱することによってある程度解消される。なお、ニ段燃焼法において空気予熱は、最終的なNOレベルに大きく影響が生じないことが、実験的にも理論的にも示されている。


e 燃料ニ段吹込み法
一方、燃料ニ段吹込み法(SFIM)の原理は、燃焼炉内に灰化水素を吹き込み、炭化水素ラジカルによってNOを還元する方法である。例えば、CHによって次のような還元反応が生じると考えられる。
6NO+4CH+4CO+2H20+3N2
燃料二段吹込み法では、二次燃料が一段めの燃料希薄燃焼が完了した位置に吹き込まれる。そこで、上記の反応によって、一段めで生成したNOは炭化水素ラジカルによって迅速に還元される。このとき、未燃炭化水素やCO、HCNが残留するが、下流でさらに三次空気を吹き込むことによって燃焼除去される。

f 他の方法
上記以外の他の方法について述べよう。
1)
低N分燃料:尚N分を含む燃料の代わりに、低N分燃料を用いることによって、低NOx化を実現する力法である。この方法は、もちろん、Fuel NOの抑制に有効であるが、一方で、燃料コストの増大が不可避である。
2)
低空気比燃焼:低空気比燃焼法は、空気比を1.0付近まで近づけることによって、酸素濃度を低下させ主としてFuel NOを低減化する方法である。この方法は、種々の既存の設備に適用できる方法であるが、この方法によるNO低減率は、他の方法に比べて小さい(10〜20%)。さらに、燃料と空気との混合や微粒化が改善しない限りは、COやすすのような未燃分の生成が増加する可能性がある。したがって、空気比を実現するためには、一般的にバーナの改善が必要である。
3)
燃料希薄燃焼:燃料に対する空気過剰率を大幅に上げるか、燃料を排ガスなどで希釈させて燃焼させる方式である。酸素過剰率が高い燃焼であるため、Prompt NOの発生が抑えられるだけではなく、火炎温度が低下するため、Zeldorich NOの生成も抑制できる。
4)
低負荷燃焼:低負荷燃焼法は、燃焼負荷を抑えて、火炎温度を低下させThermal NOを低減化しようとするものである。ここで、燃焼負荷とは、燃焼室内の単位体積、単位時間あたりの燃焼発生熱量である。この方法の問題点は、いうまでもなく高負荷燃焼を犠牲にせざるを得ない点である。
5)
空気予熱の低温化:空気予熱の低温化とは、燃焼用空気予熱温度を低下させることにより、火炎温度を低下させThermal N0xを低減化する方法である。この方法の問題点は、火炎温度の低下による熱効率の低下である。
6)
6) 水あるいは蒸気吹込み:この方法は、水あるいは蒸気を炉内に吹き込んで火炎温度を低下させて、Thermal NOを低減化する方法である。この方法の問題点は、燃焼熱の一部が水の蒸発に使われるため、エネルギー効率が低下する点である。
なお、これまで述べた燃焼法の改善によるNOxの抑制技術をZeldovich NO2対策、Fuel NO2対策、Zeldovich & FueI NOx対策別に分類してまとめたものを表−1に示す。


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