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燃焼と地球環境(4) 燃焼における排出物質の防除の基本的な考え方 牧野 敦 静岡大学工学部 |
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1. 窒素酸化物の抑制方法 燃焼ガス中の窒素酸化物(NO,NO2, N2Oなど)は、NOxと総称されている。ガスタービンのように多量の空気を必要とする燃焼機器では、NO2が生成されるものの、他の多くの燃焼機器では排出されたNOが大気中で酸化されることによりNO2が生成されるため、NOに注目してNOxの低減・防除が行われてきた。燃焼時に生成されるNOについては、前回の解説で述べたように、熱生成NOと燃料起源NOとが存在し、生成機構としては(拡大)ゼルドビッチ機構と速発NO生成機構とに大別される。このため、それぞれに適した抑制方法の適用が不可欠となっている。 |
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1.1 燃焼方法改善技術 熱生成NOでも、ゼルドビッチNOは強い温度依存性を示すため、火炎温度を低下させることがNOの生成抑制に有効である。火炎温度を低下させる直接的な方法としては、水、水蒸気、排出ガスなどを注入する方法がある。 水噴射法は、火炎中に水を噴射することで火炎温度を低下させ、NOの生成を抑制する方法である。この方法では、水と燃料の質量比を0.5増加させるごとに火炎温度が80〜120K低下する1)ので、ゼルドビッチNOの生成抑制に有効である。しかし、水の添加は熱損失の増加や、火炎温度の低下に起因する伝熱量の低下を引き起こし、そのうえ、火炎の安定性にも影響を及ぼすため、十分な注意が必要である。 水蒸気噴射法は、水の代わりに水蒸気を噴出することにより、NOの生成を抑制するという方法である。水噴射法に比べて、均一に噴射できるという利点があるが、効果は水噴射法と同程度である。排ガス再循環法(Exhaust Gas Re-circulation:EGR)は、燃焼排出ガスを燃焼用空気に混入させることにより酸素濃度を低下させ、これにより火炎温度を下げNOの生成を抑制する方法で、ポンプやブロアなどで簡便に行えるため工業的に広く用いられている。この方法では、排出ガス(370K程度)の再循環率を5%増加させるごとに火炎温度が50〜80K低下する1)ので、これに対応してNOの生成が抑制される。しかもこの方法は、ゼルドビッチNOの抑制に効果があるばかりか、火炎帯での窒素化合物の分解にも効果があり、速発NOさらには燃料起源NOの抑制にも寄与している。 一方、火炎温度を低下させただけでは、速発NOや燃料起源NOの生成を抑制することは不可能である。一般に、化学反応の進行には“燃料"と“酸化剤"とが不可欠で、これゆえ、“燃料"に相当する窒素化合物(HCN NH、CNなど)ならびに“酸化剤"である酸素について、燃焼場での濃度制御を積極的に行う必要がある。この力式には、二段燃焼法、濃淡燃焼法、アンモニア注入法などがある。 ニ段燃焼法〔図−12)〕は、燃焼をニ段階で行わせることによりNOの生成を抑制する方法で、第一段の燃焼では、燃料過濃状態(当量比が1以上)となるように空気(一次空気)を供給し、還元雰囲気とすることで熱分解により生じた窒素化合物がNOへと変換されるのを防止している。一方、燃焼室後半部分での第二段の燃焼では、残存する未燃成分の燃焼完結ならびに窒素化合物のN2への変換を促すような空気(ニ次空気)の供給が行われている。つまり、この方法は、関連するパラメータ(当量比、火炎温度、滞留時間など)の組合せによりNOの生成を抑制する方法で、多くの工業炉に用いられている。ただし、燃焼室内で還元雰囲気の領域を広くするためには、二次空気を可能な限り下流に吹き込む必要がある。なお、ニ次空気供給に際し注意すべき事項は、窒素化合物の分解が進行しないうちに空気供給を行わないこと、しかも燃焼ガス温度を上昇させないことである。 |
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濃淡燃焼法は、バーナに複数の燃料噴射口を設け、そのうち幾つかを燃料過濃状態で、残りを燃料希薄状態で作動させることにより、燃料濃度に濃淡を持たせたうえで燃焼させ、燃料過濃側では窒素化合物のNOへの変換を抑制し、燃料希薄側では残存する未燃成分の燃焼完結ならびに窒素化合物のN2への変換を促すという燃焼方式である。この方法では、空気の流動様式と燃料の濃度分布との整合が非常に重要で、これが満足されなければ、燃焼不良やすすの発生が助長される。 アンモニア注入法は、排煙脱硝剤であるアンモニアを燃焼ガス中に注入し、アンモニアにNOの分解を選択的3)に行わせる方法である。この方法は、高価なアンモニアを使用しなくてはならないうえ、燃焼ガス温度が1500 K以上であると、二次空気の吹込み方によってはアンモニアがNOに変換されかねないといった欠点もある。 このほかには、低N0xバーナと呼ばれる燃焼機器を用いて、NOの生成を抑制する方法がある。低N0xバーナは、前述のNO生成抑制法の一つまたは幾つかを一つのバーナ内に内蔵させることにより、火炎温度の低下、火炎帯での酸素濃度の低減を行い、NOの生成抑制を行うバーナであり、図−24)には排ガス再循環の方式を用いた例が示されている。さらには、多バーナ法といって、複数のバーナに異なる機能を持たせつつ、燃焼室全体で高度の低N0x化を図る方法もある。 |
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1.2 排煙脱硝技術 燃焼方法の改善によっても、環境基準を達成できない場合には、排煙脱硝装置を設置してN0xの低減を図らなければならない。排煙脱硝技術には、反応を溶液中で行わせる湿式法と、気相中で行わせる乾式法とがある。 湿式法には、亜硝酸塩や金属錯体を用いてN0xをN2に還元する方法や、N0xの窒素分を硝酸塩の形で固定化する酸化吸収法がある。なお、湿式脱硝法を用いた場合には、湿式脱硫法としか組み合わせることができず、システムの設計において自由度が小さくなるという制約もある。 乾式法には、アンモニアを還元剤として使用する選択的還元法と、一酸化炭素、水素、炭化水素を還元剤として使用する非選択的還元法とがある5)。非選択的還元法では、燃焼ガス中に酸素が残存すると還元剤の消耗が激しく、NOの分解が進行しないということが生じてくるし、脱硝後においては可燃成分を燃焼させる必要もある。一方、アンモニアを用いる選択的還元法では、発生したN0x量に応じて燃焼室内の1100〜1200Kの温度領域にアンモニアを注入し、 4NO+4NH3+O2→4N2+6H2O の反応で、NOをN2に還元するという方法である。選択的還元法では、高価なアンモニアを用いるため、実用化には不向きであるが、燃焼方法改善技術が環境基準に追随できない場合には、使用せざるをえない方法である。 |
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