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2. 予混合火炎における熱生成窒素酸化物 燃料と酸化剤(空気)とがあらかじめ混合されている場合には、予混合火炎が形成される。本講座の“燃焼の基礎理論”でも解説があったように、予混合火炎の基本的性質は燃料と酸化剤の比率に大きく依存しており、NOの生成についてもこのことはあてはまる。このため、燃料希薄状態(当量比*φが1以下)と燃料過濃状態(φが1以上)とでは、NO生成の様相がかなり異なっている。 * 子混合気体中の燃料と空気(または酸化剤)の混合比率を示す指標の一つ。完全燃焼により、予混合気体中の空気(または酸化剤)を消費しつくす燃料量を基準として、この何倍がこの予混合気体中に燃料として存在しているかを示す指標である。当量比の逆数は、空気比と呼ばれる。 |
2.1 ゼルドビッチNO |
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図-1 平面火炎背後における温度とNO濃度2)[プロパン-(酸素+空気)の予混合火炎] |
図-12) (a)には、燃料希薄の予混合気体を燃焼させた場合の平面火炎背後の温度ならびにNO濃度[ppm]が示されている。横軸は、火炎にて燃焼ガスが生成されてからの経過時間である。図‐1より燃料希薄の状態では、火炎の背後でのみNOが生成されていることがわかる3)。ロシアのゼルドビッチ4) (Zeldovich)は、燃料希薄状態でのNO生成機構の解明に最初に着手した研究者で、ゼルドビッチ機構と呼ばれる生成機構を報告している。ゼルドビッチ機構は、当初、 |
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| のニつの素反応(Elementary Reaction)から構成される反応機構であったが、これに、 |
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の素反応を追加した拡大ゼルドビッチ機構のほうが、より適切なNO生成機構と今日では考えられている1),2)。なお、この機構により生成されるNOは、ゼルドビッチNOと呼ばれている。
ゼルドビッチNOの生成速度は、拡大ゼルドビッチ機構のなかに出現するNOとNの生成速度 |
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| から算出される。ここで、[ ]は各成分のモル濃度[mol/m3]を表している。なお、ゼルドビッチNOの生成は火炎の背後で進行するため、NOやNの生成量は他の成分(化学種:O2、O、N2、OH、H)に比べてごく微量で、結局、NOとN以外の成分は平衡組成とみなすことができる3)。しかも、[N]の時間変化は[NO]の時間変化に比べて無視しうる程度なので、[N]については準定常近似(d[N]/dZ=0)の適用が可能である5)。準定常近似を導入すれば、Nのモル濃度は式(5)より、 |
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| と求められるので、これを式(4)に代入すれば、ゼルドビッチNOの生成速度は次式2)のように表示される。 |
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| 図‐1(a)中の実線で示されているNO濃度の理論値はこのようにして求められた値で、実験結果とよく一致している。なお、1に(7)を導出する際に用いた準定常近似についてであるが、この妥当性を検証した結果の一例6)を図‐2に示す。これはメタン−空気の予混合気体の燃焼について12個の素反応を考え、各成分組成の時間変化を求めた結果である。NO以外の成分組成については、反応開始後0.1ms程度で速やかに平衡に達しているのに対して、NOの生成は非常に緩慢6)で、10ms程度の時間が経過しても平衡状態からはかなり隔たっている。 |
![]() 図-2 各成分濃度の時間的変化6)[メタン−空気の予混合気(当量比 φ=1.0)] |
| 予混合気体が理論混合比(当量比φ=1)の場合については、図‐1(b)に実験結果ならびにNO濃度の理論値が示されている。この場合にも、NO濃度の実験結果と理論値との間にはよい一致がみられ、拡大ゼルドビッチ機構が理論混合比の場合にも適用可能であることがわかる3),5)。なお、ゼルドビッチNOの生成は強い温度依存性を示すため、実用上1700 K以下では、NOの排出を考慮する必要はない。 |
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2.2 速発NO(フェニモアNO) 予混合気体が燃料過濃の場合には、燃料希薄の場合とは異なり、火炎内部においてNOの生成が急激に生じることがフェニモア7) (Fenimore)により報告されている。このNOは、速発窒素酸化物(Prompt NO)またはフェニモアNOと呼ばれており、炭化水素系燃料の中間生成物が介在する場合が典型的な例ではあるが、これ以外に火炎中で、活性基が平衡濃度以上に生成されるような場合にも生じてくる。 炭化水素系燃料の燃焼では、多量のNOが生成されており、活性基の超過平衡濃度でこれを説明することは不可能である。この速発NOの生成に重要な役割を果たしているのは、火炎中に存在するHCNやCNという中間生成物1),2)であり、これは火炎中での |
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| といった素反応により生成されている。そして、これらは図‐38)に示したような反応経路を経てNOの生成に関与している。なお、種々の素反応によりNが生成された場合には、(拡大)ゼルドビッチ機構で取り挙げられた素反応も関与してくる。 一方、非炭化水素系燃料では、HCNやアミン化合物(NHなど)を経由してのNOの生成はほとんど存在していない。このような燃料では、火炎内部において平衡濃度以上に生成された活性基(OラジカルやOHラジカル)が速発NOの生成原因と考えられている2)。 |
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図-3 速発NOならびに燃料NOの主な反応経路8) (図中のCH+N2およびFNはそれぞれ、速発NOおよび燃料NOの生成機構における始点を表す) |
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2.3 当量比に対する依存性 当量比に対するNOの生成挙動が図‐43)に示されている。燃料希薄状態(φ<1)では、生成されるNOのほとんどすべてがゼルドビッチNOであること、燃料過濃の状態でも当量比が1<φ<1.4では、ゼルドビッチNOも速発NOもともに生成されること、燃料過濃の状態がより強くなるφ>1.4では、生成されるNOのほとんどすべてが速発NOであることがわかる3)。なお、当量比φの増加は、予混合気中の酸素の割合を低下させるため、中間生成物からNOへの変換が妨げられ、この点ではNOの生成抑制に寄与しているとみなすことができる。 |
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図-4 NOの生成に及ぼす当量比の影響3) [プロパン-(酸素+空気)の予混合平面火炎] |
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