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知的財産制度(6) 知的財産管理業務 腰山靖人 蟹NAX 技術統括部知的財産室 |
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はじめに 本講座の最後のテーマとして、知的財産管理業務を取り挙げる。知的財産管理業務とは、広義では知的財産部門が行うあらゆる業務を指す。すなわち、特許教育、権利保全、知的財産情報の調査(先行技術調査、無効資料調査)・提供、特許侵害の対応検討、知的財産にかかわる契約(共同研究・開発、ライセンス、権利譲渡)などである。 本稿では、主に特許を中心とした権利保全業務、特許侵害対応、特許教育について説明することとする。 |
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1. 権利保全業務 発明は、特許出願からその特許が権利満了を迎えるまでにさまざまな期限が発生する(図−1参照)。期限には、法的な期限(特許庁の期限)と社内期限と二とおりあるが、特に法的な期限については、遅れてしまうと折角出願した特許がむだになってしまうこともあるため、厳守しなければならない。 そこでまず、各段階における期限管理について、順を追って説明することとする。
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1.1 発明提案から出願まで 日本の特許制度は、先発明主義ではなく先願主義を採用している。先願主義とは、例えば同じ発明をしたものが二人いた場合、先に特許庁に出願した者(出願日が早いほう)が優先される制度である。米国が採用している先発明主義は、出願日ではなくラボノートなどで先に発明したことを証明できた者が優先される。 したがって、日本においては、発明提案から出願までを、できるだけ速やかに行わなければならない。特に、最近の情報化社会にあっては、発明のネタとなる情報が一瞬にして広がるため、何を発明するかだけでなく、いかに早く特許出願するかがますます重要になりつつある。 そこで、発明提案から特許出願までの期限を設定し、期限内で処理を終わらせるよう管理する。また、発明提案から特許出願までの期限をさらに細分化し、発明提案から、特許出願原稿完成までの期限、特許出願原稿のチェック完了までの期限も管理してもよい。 |
1.2 出願から登録まで (1)優先権主張 a 特許出願等に基づく優先権主張(国内優先) 先に述べたように、日本は先願主義を採用しているため、研究・開発初期の段階で出願することが少なからずある。この場合、発明がまだ十分完成していない場合もある。それを補完する目的で、国内優先制度を利用することができる。 国内優先制度とは、特許出願してから1年以内であれば、その出願に発明、実施例を加えたり、他の出願と合体させたりできるという制度である。具体的な利用例としては、実験を進めていて、出願のときに提出したデータより明確な結果が得られた場合、または開発を進めていて、出願のときに提出した実施例より具体的な形が得られた場合などがある。 国内優先の期限は、出願してから1年以内である。したがって、出願を急いだため、内容がまだ不十分であると判断される特許については、1年以内に国内優先をするべきか否かの判断が必要である。 b パリ条約による優先権主張 特許などの手続きに関する国際条約であるパリ条約に加盟している国に特許を出願する場合、日本における特許出願に基づいて出願することが可能である。これを利用することで、日本の出願日が優先日とされる。この期限も先ほど述べた国内優先と同様、出願から1年間である。 したがって、出願してから例えば半年後に発明部門に外国出願をする必要があるか否かを確認をするための管理をする。 |
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(2)審査請求 特許は、出願をしただけでは審査されない。出願後あるいは出願と同時に、審査請求をすることにより、特許庁は初めて審査に取りかかることになる。審査請求期限は、出願から7年以内である。審査請求をいつ行うかは、以下に述べるとおり、ケースバイケースである。 出願と同時に審査請求をすることも可能であるが、次のような問題点がある。 第1に、出願したときは非常に画期的な技術であると思っていても、しばらくたつと、もっとよい代替技術を発見したり、他社の先願特許を発見したりして、不要な発明になってしまうことがあり、審査請求の費用がむだになってしまうことがある。 第2に、もしその特許出願の特許性がなかった場合、拒絶の結論が出るのも早くなってしまう。すなわち、審査請求を期限ぎりぎりまで延ばし、拒絶の結論が出るのを先延ばしし第三者を牽制するという手段がとれない。逆に、審査請求期限7年ぎりぎりに審査請求をすると、権利期間が短くなってしまう(特許の権利期間は、登録から始まる。ただし、出願から20年までが最長)という問題もある。したがって、すぐに権利行使を考える特許については、早めに審査請求をし、そうでない特許についてはしばらく審査請求を待つ、あるいは審査請求しない、という方法がよいと考える。一つ一つの特許について、審査請求をいつのタイミングでするかを発明部門に問合せ、管理していく必要がある。 なお、平成13年から、審査請求制度が変わり、審査請求期間は出願から3年となる。これは、第三者への牽制のため、審査請求を先延ばしにすることが、特許庁のプロパテント政策の一つである審査期間の短縮を妨げるためである。この改正により、今後、出願の段階における発明の見極めがますます重要になってくるであろう。 |
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(3)拒絶理由・拒絶査定対応 特許庁がその特許を審査し、審査官が新規性あるいは進歩性がないと判断すると、拒絶理由通知を発送する。その拒絶理由通知に対して反論する場合は、60日以内に意見書(および補正書)を提出しなければならない。その期限内に提出しないと、拒絶査定となる。また、意見書を提出しても、審査官が納得しなければ、やはり拒絶査定となってしまう。拒絶査定に対する反論(拒絶査定不服審判請求)の期限は、拒絶査定から30日である。 拒絶理由・拒絶査定が届いた特許について、発明部門と知的財産部門はどのように対応するかを検討するわけだが、どのように反論するかだけでなく、この時点でまだ必要な特許であるか否か、あるいは拒絶理由・拒絶査定を回避するため、権利範囲を限縮せざるを得ない場合、それでも必要な特許であるか否かをも併せて判断する必要がある。 |
1.3 登録から権利満了まで (1)設定登録 特許庁が、その特許出願を登録にすると認めると、特許査定が届く。特許査定から30日以内に最初の3年分の特許料(登録料)を支払うことによって設定登録され、特許(登録)になる。30日以内に支払わないと、せっかく登録になった特許が無効になってしまうので、確実に期限内に支払うよう管理しなければならない。 |
1.4 発明報奨 特許法第35条第3項に“従業者は、契約、勤務規則その他の定により、職務発明について使用者等に特許を受ける権利若しくは特許権を承継させ、又は使用者のため専用実施権を設定したときは、相当の対価の支払を受ける権利を有する”とあり、同条第4項には“前項の対価の額は、その発明により使用者等が受けるべき利益の額及びその発明がされるについて使用者等が貢献した程度を考慮して定めなければならない”とある。すなわち、発明者には相応の報酬を与えなければならないということが、特許法で規定されている。 報奨金に関する規定は各社さまざまであるが、報酬を与えるタイミングから、おおむね以下のようである。
したがって、報奨金管理としては、どの特許がどの報奨タイミングにきているか、対象者は誰か、評価はどれほどあったのかを管理する必要がある。 最近では、その企業に多大に貢献した特許について、高額な報奨金を支払う企業も増えてきている。 |
1.5 特許管理システム 管理する特許が膨大な件数となってくると、紙による台帳管理を続けていたのでは、業務のさらなる効率化は望めない。 最近では、各メーカーからデータベースを使った特許管理システムが提供されている。特に最近のものは、単なるクライアントサーバーシステムからイントラネットを使ったシステムが目立って増えてきており、さらに、知的財産管理部門、発明部門、特許事務所とのやりとりをワークフローで構築したものも出てきている。 なお、特許管理データベースによる社内情報発信に際しては、公開(出願から約1年6箇月)前の自社特許情報や特許に関連する契約情報、および他社特許の検討結果などの機密情報も含まれる、他社特許公報のデータベースと比べると、セキュリティーへの考慮がより一層必要となる。 |
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