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知的財産制度(4)
知的財産情報


花村泰伸 (株)山武 法務知的財産部知的財産室

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キーワード:法規(Laws)、特許(Patent)、情報(Information)、検索(Search)


はじめに
最近のインターネットの普及や企業内イントラネットの整備により、必要な情報を短時間に低コストでかつ労力なく効率的に入手できる環境が急速に整ってきた。企業内においては、1人1台のパソコンが割り当てられ情報の入手が容易になってきている。しかし、情報を容易に入手できる環境が整っているとはいえ、どこにどのような情報が存在して、どのように入手するかがわかりにくいのが現状である。情報量が増大する一方、利用者の情報処理能力が伴わないのである。

“知的財産情報”もその一つであり、技術者が必要とする情報のみを容易に入手できるとすれば、これほど有用なことはない。

“知的財産”とは、特許、実用新案、意匠、商標、著作物などの総称をいい、特許権を代表とする工業所有権よりも広い概念を意味する。“特許情報”とは、特許制度や工業所有権に関する統計などの広義の情報を意味する場合と、特許庁が定期的に公表する公報それ自体またはその加工物の狭義の情報を意味する場合がある。ここでは、後者の狭義の情報、すなわち特許公報などをいうものとして取り扱うこととする。

本稿は、建設設備技術に携わる読者の方々に、知的財産制度の理解を深めていただくために、特許と実用新案に関する特許情報についてさまざまな角度から簡潔に説明する。

図-1に特許情報へのアクセスの概略図を示す。特定技術分野の技術動向調査や先行技術調査など、特許情報の入手目的はさまざまである。この目的の下で、必要な特許情報を入手するわけであるが、特許情報の情報源に対して検索をかけ、情報を出力し、活用するサイクルをとる。本稿では、まず“1.特許情報”、“2.特許分類”で情報源である特許情報について分類の側面からその特徴や体系を理解していだだき、“3.特許情報の調査方法”、“4.特許情報の活用”で特許情報の調査手順やパテントマップによる活用へと展開する。情報源の姿が明確になれば、比較的容易に調査や活用を実現できると思われる。
図-1
図-1 特許情報へのアクセス
1. 特許情報
1.1 特許制度と特許情報
特許制度は、発明を開示する代償として特許権を付与し、技術の累積的進歩により産業の発達に寄与することを目的とした制度である。特許情報は、この特許制度の下で発行される公報であるから、特許制度上何らかの機能や役割があるはずである。実は、特許情報は特許制度上重要な機能や役割を果たしているのである。
特許制度は、産業の発達を目的とし、広く産業政策の一環として設けられた制度である。この目的を達成するために、図−2に示すように“発明の保護”という手段と“発明の利用”という手段の二つの大きな手段を掲げている。これらの手段を巧みに調和させているのが特許制度の特徴であり、どちらが欠けても目的は達成できない。特許権を付与することは“発明の保護”を実現する具体策であり、発明を公表することは、“発明の利用”を実現する具体策である。発明を公表することにより、技術者は発明の内容を知り、重複した研究を避け余分な労力を使うことなく、それを基盤としてよりよい発明を創作する。これが技術の累積的進歩となり、産業の発達につながるということである。
特許情報は特許制度のなかでは、“発明の利用”を実現する重要な機能や役割を果たしている。特許情報を公表しないことには、特許制度の円滑な運用を図ることができないといっても過言ではない。
図-2
図-2 特許制度と特許情報

1.2 特許情報の特徴
特許情報の特徴は主に、膨大な情報量、有用な技術情報、統一フォーマットの三つが挙げられる。

(1)膨大な情報量
最近の特許出願は、年間約50万件であり、世界では約120万件にも及ぶことから、日本の国内出願は世界の約40%を占めることになる。この量が、毎年積み上げられているから、とにかく膨大な情報量である。しかし、膨大であるがゆえに、“発明の利用”を図るため、分類コードの付与や公報のフォーマットの統一化などによって、容易に調査ができるようさまざまな工夫がなされている。

(2)有用な技術情報 発明者は、今までにない最高水準の発明を創作したときに、その技術内容を明細書や図面に記載して出願する。言い換えると、特許情報は出願日における最高水準の最先端技術情報なのである。
また、出願時に提出する明細書や図面は、当業者が理解でき、かつ実施できる程度に具体的に記載することが義務づけられているため、特許情報に記載された技術は、当業者にとって容易に把握できるものである。

(3)統一フォーマット
特許情報は、発明の名称、特許請求の範囲、発明の詳細な説明、実施例、図面、要約書などの一定の形式に従って構成されている。外国で公表される公報も全く同一の形式ではないものの、ほぼ共通した形式で構成されている。これは、情報の調査や整理のために便宜を図ったものである。

1.3 加工レベルによる分類
特許情報を有効に活用するために情報を整理したり、特許情報の検索が容易になるように区分したりすることがよくある。図−3(a)に特許情報の加工のレベルに応じて分類した図を示す。

“一次情報”は、“特許公報”や“公開特許公報”などの公報それ自体の原始情報であり、特許庁が公表した公報そのものをいう。

“二次情報”は、一次情報を加工または解析して整理した情報である。例えば、発明の内容を要約し、必要な情報を付加した抄録をいう。この情報では、一次情報のように詳細な情報を得ることはできないが、短時間で発明を把握するのに有効である。

“三次情報”は、二次情報をさらに加工または解析して整理した情報である。例えば、索引や目次をいう。この情報からは、発明の内容を正確に把握できないが、簡便に整理されているため、特許調査の参考になる。
図-3
図-3 特許情報の分類

1.4 性格による分類
これは、特許制度からみた分類であるともいえ、技術者にとっても特許権の存在を確認するために認識しておく必要のある分類である。図−3(b)に特許情報の性格により分類した図を示す。

“技術情報”は、将来の技術動向の方向性や自社または他社の開発動向の方向性を把握するなどの目的を果たすための情報であり、特許情報を技術情報として広くとらえたものである。主には、“公開特許公報”をいい、出願日から1年6箇月経過後に発明を公開して、第三者による利用に供すべく出願公開制度の下で発行される公報である。この場合、出願から1年6箇月の空白期間があること、権利付与前の技術であることに留意すべきである。

“権利情報”は、特許権が付与されたときに公示される情報であり、主には“特許公報”をいう。情報の内容は、技術情報と同等であるが、“特許公報”は権利書的な性格を持ち、特許請求の範囲に記載された発明が権利範囲に直接関係するため重要である。また、この権利の存続期間は、出願日から20年までであること、1年ごとに年金を納付しなければ権利は消滅してしまうことから、“特許公報”であっても、すでに権利が消滅しているものもある点に留意すべきである。

1.5 種類による分類
これは、特許庁の発行する公報の種類による分類である。図−3(c)に特許情報の種類により分類した図を示す。

特許庁が発行する公報には多くの種類があり、各々発行の時期や意味が異なるため、利用者は使い分ける必要がある。

“特許公報(公告)”は、特許権が付与されたときに発行される公報であり・権利情報としての性格を持つ。出願公告されたときにも、特許権と同等の権利が発生することから、公告公報も特許公報と同じ種類に属する。しかし、出願公告後に補正がされ、出願公告時点の内容と特許権が付与された時点の内容が異なる場合、つまり権利範囲が異なる場合がある点に留意すべきである。ただし、現在、出願公告制度は廃止されている。

“公開特許情報”は、出願日から1年6箇月経過後に発行される公報であり、技術情報としての性格を持つ。審査の結果、拒絶されない出願については“特許公報”が発行されるため、内容的には、“特許公報”と重複する場合もある。

“登録実用新案公報(公告)”および“公開実用新案公報”は、上記“特許公報(公告)”および“公開特許公報”と同じ種類に属する公報であり、発明と考案の違いのみである。

発明と考案は・同じ技術的思想の創作である点で同じであるが、考案は創作の高度性が要求されない点で異なり、考案は小発明であるともいわれている。ただ、考案には方法のカテゴリーが含まれない点で発明と大きく異なる。また、現在は、実用新案制度は実体要件を審査することなく権利を付与するいわゆる無審査制度を採用しているため、公開実用新案公報は発行されていない。

“公表特許公報”は、外国語でされた国際特許出願について提出された日本語の翻訳文について、原則として出願日から20箇月経過後に発行される公報である。

“再公表特許公報”は、日本語でされた国際特許出願について、原則として出願日から1年6箇月経過後に発行される公報である。

ここで、国際特許出願とは、同一の発明を複数の国へ出願する際に、一つの手続きで出願が可能となる特許協力条約に基づいてなされる出願である。例えば、日本、中国、米国に同一の発明を出願する場合は、これらの国を指定して、日本語で日本の特許庁に対して国際特許出願をすることができるというものである。

国際特許出願されたものは出願公開されないため、“公開特許公報”は発行されない。したがって、漏れのない先行技術調査を行うには、“公開特許公報”のみでは足りず、“公表特許公報”および“再公表特許公報”も調査する必要がある点に留意すべきである。また、国際特許出願について日本で特許権が付与されると、“特許公報”は発行されるため、権利情報として調査を行うには“特許公報”の範囲でたりる点にも留意すべきである。

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